研究:呼吸器・アレルギー領域

教室紹介

研究:呼吸器・アレルギー領域

呼吸器領域

呼吸器領域の研究は、『呼吸と循環の融合』を基本理念としながら、『Clinical-Orientated Research』(治療医学への貢献を目指した研究)をモットーに、臨床・教育とともに教室員一同で取り組んでいます。

1. 呼吸不全

厚生労働省特定疾患『呼吸不全研究班』の分担研究者として、呼吸不全の病態解析と治療戦略に関して精力的に取り組んでいます。特に、急性呼吸不全・慢性呼吸不全急性増悪患者や重症睡眠時呼吸障害患者に対する非侵襲的呼吸管理の導入、低酸素血症および組織低酸素の病態解析、肺動脈性肺高血圧症における治療指針、慢性閉塞性肺疾患(COPD)における栄養障害対策、呼吸調節機構からの呼吸困難対策、睡眠時無呼吸症候群(肥満低換気症候群)における循環器合併症の病態把握と治療指針、睡眠時無呼吸症候群がもたらす社会問題対策、等を中心に治療医学につながる臨床研究、基礎研究を行っています。

2. 睡眠時呼吸障害

近年、患者の増加が社会的問題にもなっている領域で、これまで、循環器合併症と生命予後、睡眠時無呼吸と肺高血圧症・心不全との関連病態、睡眠時無呼吸とプロゲステロン・性差、睡眠時無呼吸とプロスタノイド代謝、レム睡眠における交感神経系の関与、CPAP治療によるQuality of Life改善効果、等を明らかにしてきました。また睡眠時における呼吸循環の相互作用について病態解析をすすめるとともに、メタボリック症候群における睡眠時呼吸異常の関与、呼吸調節系とレプチン・アディポネクチンの相互作用、夜間低酸素ストレスによる動脈硬化促進機序としての単球・マクロファージ機能の解析、等を中心に細胞分子生物学的アプローチを駆使して研究を展開しています。さらに、睡眠時無呼吸症候群、肺血栓塞栓症、急性呼吸不全患者を対象としてvon Willebrand factorの活性とその質的変化に関して本学輸血部とともに共同研究を行っています。

3. 慢性閉塞性肺疾患(COPD)

今後世界的にも患者の増加が予測されるCOPDの病態や治療に関する臨床的研究を行っています。なかでも、日本呼吸器学会呼吸機能検査ガイドラインの作成委員としてとしてスパイロメトリーの正しい普及に取り組むとともに、COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第4版の作成委員としてCOPDの診断、治療の普及、全身性疾患としてのCOPD管理に取り組んでいます。COPD患者に対する非薬物治療、包括的リハビリテーションの一環としての栄養管理・治療について、臨床的・基礎的研究を行っています。栄養障害に関しては、各種炎症性サイトカイン、脂質・細胞代謝障害、中枢神経系・内分泌系の関与を中心に病態解明を行っています。また、成長ホルモン分泌促進因子として発見されたグレリンのタンパク同化、抗炎症、摂食促進作用に着目し、多施設共同研究を実施して、COPDおよび呼吸不全患者に対する臨床応用を目指しています。また、喫煙曝露などによる動物実験モデルを用いて、COPDの病態・発症機序の解明および治療戦略の開発を視野に入れた基礎的な研究を行っています。

4. 肺高血圧症

国の難病指定治療給付疾患である原発性肺高血圧症や慢性肺血栓塞栓症(肺高血圧症型)、さらに膠原病性肺高血圧症や間質性肺炎に随伴した肺高血圧症等を対象に、右心カテーテル検査を含めた臨床評価を行うとともに新規治療法の導入を行っています。また、エコノミークラス症候群やロングフライト症候群、さらには中越地震で話題になった急性肺血栓塞栓症患者の診断と治療に取り組んでいます。同時に基礎研究として、慢性低酸素曝露やモノクロタリン投与による、各々、低酸素性肺高血圧症、炎症性肺高血圧症実験モデルにて、肺高血圧症の基礎病態をケモカイン、サイトカイン面から解析するとともに、新規治療法の開発に関する研究を行っています。近年では、抗炎症作用を示すことが明らかになったグレリンを用いた肺高血圧症モデルに対する作用についても取り組んでいます。

5. 肺癌

当院は、地域癌拠点病院として奈良県中南和地域の癌診療の中核を担っています。当科では地域医療連携パスを導入し、連携病院と患者情報を共有しながら肺癌の診断、治療、緩和および終末期医療を含めた包括的治療の中心的役割を果たしています。放射線治療科、呼吸器外科、放射線科と合同でキャンサーボードを主催し、速やかで正確な臨床診断に努めると同時に、患者を全人的に評価し、治療方針を決定しています。また、肺癌患者のQOL維持に大きく貢献する外来化学療法にも積極的に取り組んでいて、平成17年の外来化学療法室開設以来、年々症例数が増加しています。臨床研究においては、患者検体の遺伝子解析結果を基に、個々人に最適な化学療法を選択し、放射線療法や手術療法を組み合わせた集学的治療法の確立を目指しています。また、西日本がん研究機構の一員として、全国規模の臨床試験(臨床第III相試験)に参加し、新たな治療法の開発にも努めています。基礎研究においては、摘出標本を用いて発癌や化学療法抵抗性に関わる遺伝子およびタンパク質の解析を行い、新たな分子標的治療やオーダーメイド治療の実施を目指したトランスレーショナル・リサーチを行っています。

6. 間質性肺炎・肺線維症、膠原病肺

特発性間質性肺炎や特発性肺線維症、膠原病肺に対する診断と新規治療の開発について研究をしています。また、間質性肺炎と肺高血圧の双方に作用する新規プロスタサイクリン系製剤の開発をおこなうとともに、骨髄間葉系幹細胞を用いた肺再生医療を目指した基礎研究を行っています。

7. 肺結核・肉芽腫性肺疾患の免疫

肺結核の増悪因子としての加齢および糖尿病などの各種合併症の結核免疫におよぼす影響を研究しています。また、肉芽腫性肺疾患におけるメタロプロテアーゼやケモカインの関与について細胞生物学的研究を行っています。

8. 気管支喘息とアレルギー

小児気管支喘息の母親の影響について、気管支喘息の病態に対する免疫寛容誘導や抗炎症薬の作用について、気道リモデリングに対する機序の検討と治療的介入について、大気汚染粉塵と気管支喘息の関連について、ならびに花粉症に対する樹状細胞と単球の関与についての研究を行っています。